呪いの正体
君は、呪いなんて非科学的なものを、まだ信じているのかい?
私は呪いの正体を、科学的に解明することに成功した。
それは神秘的でも、超自然的でもない、極めて現実的な現象だったんだ。
たとえば、だれかにひどい仕打ちをした人が、呪い殺された……なんて怪談がある。
種明かしをしよう。
ひどい仕打ちをするような人は、だれかに恨まれていることを自覚しているものだ。
どこかでだれかが、自分が不幸になることを願っているんじゃないか……、いつか復讐しようと思っているんじゃないか……。
そんなことを考えていると、心身が不調になって当然だ。
ストレスは万病の元だからね。
いずれ病気になって、死んでしまう人がいても不思議ではない。
それを人は、呪いだと解釈するんだ。
呪いに似た「たたり」も同じだ。
神でも悪魔でもいいが、いかにも「たたられそう」なことをしてしまった。
それを気に病むことで、いろいろな症状が精神や肉体にあらわれるんだ。
呪いの話に戻ろうか。
人にひどい仕打ちをしても、なんとも思わなければ、その人は呪われないかもしれない。
でもね、人間にはだれにだって、良心というものがある。
自分には良心なんてない……と思っているような人でも、だれかにひどいことをすると、胸の奥のほうがチクチクするんだ。
だから良心が痛むようなことは、やらないのが一番だね。
とはいえ、知らず知らずに人を傷つけたり、過ちをおかしたりすることは、だれにでもあることだ。
君にも、一つや二つは、覚えがあるだろう?
でも、ひどいことをした……とか、だれかに恨まれているかも……といったことを、あまり考えすぎないほうがいい。
呪われてしまうからね。